モニア、以下 Atmonia社)は、CO2排出量の削減につながるアンモニアをクリーンに合成するための触媒探索の共同研究において、Atmonia社の触媒に関する知見と富士通が開発した高速な量子化学シミュレーションとAI技術を活用することで、高価な貴金属ではなく、比較的安価に利用できる酸化モリブデン(MoO2)の一部をタングステン(W)で置換した新たな触媒材料の有力候補を2023年5月に発見しました。
2023年9月に国際論文誌Cell Reports Physical Scienceに本発見の成果を認められ、Atmonia社、富士通、アイスランド大学(注3)、国立大学法人東京工業大学(注4)の共著論文として掲載されました。
今後、富士通とAtmonia社は、発電や水素エネルギーの原料となるクリーンなアンモニア合成の実現に向けて、実験を通じて新たな触媒材料候補の有効性を検証します。また、富士通は、今回開発した量子化学シミュレーションとAI技術により材料探索を効率化する技術を、2023年10月3日より、先端AI技術を素早く試せるAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform」を通じて提供を開始します。さらに本技術を、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、人と地球が共存し持続可能な成長を支える「Sustainable Manufacturing」のオファリングとして提供を目指します。
経緯
富士通とAtmonia社は、2022年4月に富士通が開発したシミュレーション高速化技術と因果発見技術を活用してアンモニア合成触媒を効率よく探索するための共同研究を開始しており、今回の新触媒材料候補の発見は、アンモニア生成効率が高く、かつアンモニア生成時に投入する電力エネルギーも低い有望な触媒材料の候補であるため、常温常圧で水と空気と電気からアンモニアを合成する手法の実用化に向けた大きなステップとなります。
両社は、まず約2,400種類の大量の触媒条件の組み合わせ候補を選定したのち、それらすべての候補に対して反応過程まで考慮した約1.8万件におよぶ量子化学シミュレーションを高速に実行し、効率良くアンモニアを合成できる比較的安価な触媒を網羅的に探索するためのシミュレーションデータを収集しました。その後、Atmonia社のこれまでの触媒開発の知見に基づき、アンモニア発生反応が起こりやすい窒素を水素よりも優先して吸着しているか、合成時のエネルギーが低いか、などの有望な触媒候補としての選定基準を設定し、シミュレーションデータから触媒の組み合わせを絞り込み、酸化モリブデンを基本構造としてその表面部分の一部をタングステンで置き換えた、非貴金属を組み合わせた材料候補の発見に至りました。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁
注2 Atmonia ehf.:
本社 アイスランド レイキャビク、CEO グズビョルグ リスト。アンモニア生成を効率よく行うための触媒開発を、コンピュータシミュレーションと実験を用いて行うアイスランドのベンチャー企業。
注3 アイスランド大学:
本部 アイスランド レイキャビク、学長 ヨン アトリ ベネディクトソン
注4 国立大学法人東京工業大学:
本部 東京都目黒区、学長 益 一哉
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