この記事の要点は...
- ソートリーダーシップ活動により、“技術の東芝”の存在感を発揮する!
- 産業向けIoT領域の「標準化」に向け、グローバル連携で取り組む!
- 「Create Together(ともに生み出す)」を胸に、サステナビリティへ共創を!
私たちが暮らし、モノが存在する現実(フィジカル)空間と、そこから生まれる多様なデータが蓄積・分析されるサイバー空間――フィジカルとサイバーを連携させて新たな価値を生むのが、CPS(サイバー・フィジカル・システムズ)だ。東芝はCPSの世界的企業を目指し、全社を挙げた変革を加速している。そこでは技術の開発と実装を繰り返しつつ、グローバルで様々な組織の連携が必須だ。
Daniel Young氏は、東芝のデジタル・イノベーション・チームの一員だ。全社からIoT領域のベストプラクティスを見出し、社内そして業界アナリストや業界団体など主要インフルエンサーに提供する、ソートリーダーシップ活動に従事している。最先端の技術だけではなく、それらの価値についての発信力も高めるため、グローバルのチーム連携はどのように力を発揮しているのか。Young氏が視線の先に望む、新時代の共創を聞いた。
ビジョンや展望、時代を読む視線まで共有する、ソートリーダーシップ活動
「IoT(Internet of Things)※1領域でソリューションを提供すべく、東芝の認知度を向上させる、それが私の役割です。そのために東芝のグローバルメンバーと積極的にコミュニケーションし、IoT製品・サービスの開発・実装を推進するTIRA※2、TIRAを基にソリューション化したTOSHIBA SPINEX、そしてベストプラクティスを議論し、取りまとめています。世界中のメンバーと一体になり、様々な組織・機能をつなげて進めています」
※1:従来インターネットに接続されていなかったモノが、サーバーやクラウドサービスに接続され情報交換をする仕組み
※2:TIRA: 東芝IoTリファレンスアーキテクチャー(TOSHIBA IoT Reference Architecture)の略称
Young氏は、前を見据えながらこう語り出した。TIRAは、東芝の産業向けIoTサービスを企画、開発、実装する際に参照する枠組みである。TIRAに準拠してビジネスを企画し、技術を開発し実装することで、現実空間のデータを生かすことができる。適応領域は、インフラやエネルギー、製造、物流などと幅広く、TOSHIBA SPINEXというブランド名で展開されている。
「東芝全体がTIRAを活用し、TOSHIBA SPINEXを推進することで、組織を越えた連携が促進されます。その結果として、重複した開発を減らし、より“Best-in-breed ”なサービスを生み出せるのです」
“Best-in-breed ”とは、それぞれの分野で最も良いハードウェアやソフトウェアを選び、組み合わせることを言う。東芝には多種多様な組織があり、それぞれのビジネス要件を満たす最適なIoTサービスを手がけている。ここで、ばらばらに開発していては総合力を発揮できない。TIRAがあることで、様々なメンバーが同じ枠組み、言葉を使って活動できる。開発したものは東芝の共通資産として整理・整備し、それぞれの領域に最適な形で実装していく。だから、彼はBest-in-breedと表現した。
TIRAそのものやTOSHIBA SPINEXのベストプラクティスを発信すること、それも彼の重要な役割だ。世界中の先進企業が、業界アナリストをはじめとするインフルエンサーたちとやり取りし、自社の事業や戦略を伝え、独自のポジションを取りにいく。Young氏は、TIRAの特徴に加えて、「東芝が、産業向けIoTやAIなど最先端技術をどのように捉え、CPS企業として進んでいくのか」といった、ビジョンや展望、時代を読む視線まで共有するという。
産業向けIoTで存在感を増し、グローバルな共創を思い描く
「そもそも産業向けIoTの領域で、東芝の存在感は大きくはありませんでした。東芝が、様々な関係者との共創を可能にするフレームワークであるTIRAを手がけていること、その内容を知ると、アナリストは一様に驚きました。東芝といえば、ノートパソコン、テレビといった家電企業としか認識していない人もいました。もう作っていないのに、ですよ!
こつこつと愚直にコミュニケーションを続けることが大切です。東京のメンバーと一緒に説明資料の精度を高め、東芝の産業向けIoT領域における認知度は確実に向上しています」
社内での知見の共有、アナリストとのコミュニケーションに加えて、Young氏はIIC※3といった産業向けIoTの業界団体に参画している。それらの場では、先進企業が導入事例や知見を持ち寄る。こうした対話を通じて、ハードウェアやソフトウェアの開発・活用における包括的なルールが作られる。つまり、グローバルな「技術標準」が議論され、形作られていく丁々発止の場なのだ。
※3:GE社、IBM 社、Intel社などが中心となり 2014 年に設立された世界最大級の IoT 推進団体
「私はIICの運営委員です。ここで東芝のTIRAやベストプラクティスを発表することで、『産業向けIoTにおいて東芝は先進的だ』といった認知を広めてきました。そして、包括的なルール作りにより、異なる企業との連携も視野に入っています。
今の時代、健全な競争は必要ですが、企業間の共創もまた不可欠です。技術の標準化こそ、業界全体を活性化させつつ、グローバルにイノベーションを醸成するのです」
Young氏が強調するように、IICなどの標準化に向けた活動は、社会への周知や最新潮流の把握に加えて、時には競合企業とも力を合わせて必要な変革を話し合っていく。Young氏は「こうした共創の先には、エンドユーザーや社会に資する産業向けIoTサービスの形が見えています」と語った。思い描くのは、選択肢が多様であり、多様な背景や属性を持った人々が、それぞれに力を発揮できる世界なのである。
ともに生み出す―― 人と、地球を持続可能にする“共創”の志
Young氏はもちろんIoT技術に深い知見を持ち、その他の先端技術も注視している。大学では電気工学を専攻し、東芝に入社後は技術者としてテレビの組み立て、試験装置の開発に携わり、その後にソフトウェアエンジニアリングの部署へと移った。ここでHDMIなどの音声・映像の規格に関わり、技術標準の重要性、業界団体の価値を理解したという。標準化活動について知見と経験を蓄積し、東芝の幅広い事業を肌で感じてきた。こうして培ってきたものが、彼の揺るぎない基盤になっている。今、ソートリーダーシップ活動をしながら、何を思うのだろうか。
「誇りに感じるのは東芝の風土です。私は技術者出身ですから、交渉やマーケティングのスキルを磨いてきた訳ではありません。では、なぜこの仕事ができているのかと言えば、世界中の東芝社員からなるチームで向き合っているからです。
それぞれが異なる経験を積み、スキルを持っている。私は、対話を通して、世界の同僚たちのスキル、知見を吸収してきました。東芝で働いて長くなりましたが、知らなかった事業や技術、そして世界中の新たな同僚に今なお出会えます。こうした学びと出会いは私の喜びであり、大きな財産です」と笑顔を見せた。
「Create together(ともに生み出す)」「Do the right thing(誠実であり続ける)」――東芝の価値観はベストプラクティスの共有、発信、グローバル標準化活動における彼の前進を支える信念でもある。その信念が結実したソートリーダーシップの成果として、次のことを静かに、しかし自信を込めて教えてくれた。
「2022年、IICの運営委員会で次年度の重点テーマを議論し、東芝が提案した『サステナビリティ』が採用されました。TIRAは、社内外の共創を促すことで重要なEnabler(新たな社会を築く成功要因)になり、それを促進するサービスがTOSHIBA SPINEXです。その先に、エンドユーザーや社会の課題を解決し、人と地球を持続可能にできます」
新たな価値を共に創り出そう。誠実にビジネスを見つめ、前に進んでいこう。Young氏の眼差しは、新たな技術がもたらす明るい未来に向けられている。
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TIRAやTOSHIBA SPINEXについての解説、背景にある考え方については、「世界潮流は“標準化” 東芝の戦い方とは? ~欧米で活用が進む、産業向けIoT基盤に乗り遅れるな!」を参照。
関連サイト
※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。