2022.10.20:富士通と東京工業大学、次世代コンピューティング基盤の実現に向けた協働研究拠点を設置


持続可能な社会へ向けたイノベーション創出に貢献

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)と、国立大学法人東京工業大学(注2)(以下、東京工業大学)は、ゼロエミッションや安心安全な社会の実現に向け、AIやハイパフォーマンスコンピューティング(以下、HPC)技術によるシミュレーションにおいて、今までにない大規模なデータ処理が可能な次世代コンピューティング基盤の実現に向けた「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」を東京工業大学 すずかけ台キャンパスに2022年10月20日に設置しました。本協働研究拠点は、富士通が推進する「富士通スモールリサーチラボ」(注3)の取り組みの一環であり、東京工業大学協働研究拠点制度(注4)を活用し、東京工業大学オープンイノベーション機構(注5)の支援のもと設置します。

富士通は長年、スーパーコンピュータ「富岳」(注6)をはじめとする高性能なコンピューティング基盤および基盤上で気象予測や創薬分野などの科学技術計算を実行するアプリケーションを開発してきました。また、東京工業大学も、GPUやサーバ液浸技術(注7)などの最先端のコンピューティング技術を活用し、さまざまなAIによる大規模深層学習やシミュレーションとデータ科学の融合による科学技術計算の高速化を達成してきました。

本協働研究拠点では、これらの富士通の研究開発力と東京工業大学の学術研究を組み合わせ、東京工業大学が有するスーパーコンピュータ「TSUBAME(ツバメ)」などのHPCを超える次世代コンピューティング基盤の確立、およびその技術の社会応用の拡大を目指します。

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「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」設置について調印した
富士通 代表取締役社長 時田 隆仁(左)と東京工業大学 学長 益 一哉(右)
(於 東京工業大学 大岡山キャンパス 2022年10月20日)

背景

高性能コンピューティング基盤は、これまで気象や創薬分野の物理事象シミュレーションなどの定型的なデータを処理する科学技術計算の分野を中心に利用されてきましたが、近年、社会のデジタル化やスマートシティなどの実現に向けて、スマートフォンやセンサーなどのエッジデバイスからの膨大な情報を集約・処理することによる、新たなサービスの創出や複合的な社会問題の解決などへの利用が求められています。そのため、ハードウェアからアプリケーションまでの異なる技術レイヤーの専門家を集結し、コンピューティング全体のアーキテクチャーの研究を推進する必要があります。

また、コンピューティング基盤の性能向上に不可欠な半導体の微細化は長年技術向上を遂げてきた一方で、近年その限界が見えつつあります。

これらの課題解決に向け、富士通と東京工業大学は、互いの持つ技術や実績、人材や知見を組み合わせた「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」を設置し、今までにない大規模なデータ処理が可能な次世代コンピューティング基盤を実現する共同研究を開始します。これにより、両者は、コンピューティング分野における新たな技術開発と人材育成を通して社会課題の解決に資することを目指します。

「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」について

1.設置期間:2022年10月20日から2026年3月31日まで

2. 設置場所:神奈川県横浜市緑区長津田町4259 
      東京工業大学 すずかけ台キャンパス G2棟 310号室、312号室 
     (大岡山キャンパス所属の教員も協働研究拠点メンバーとして参画)

3. 研究内容:半導体微細化に依存しないコンピューティングの持続的な性能向上を実現するため、AIやHPC分野のアプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの、さまざまなコンピューティング分野の専門家が協働研究拠点に集い、以下(1)から(4)の研究サイクルを回すことで、ハードウェアとソフトウェア双方の技術革新による次世代コンピューティング基盤の確立を目指す。

(1) 流体解析などの科学技術計算や大規模、複雑なAI処理を現行のCPUやGPU上で動作させ、性能におけるボトルネックを解析 
(2) 解析結果を踏まえ、さらなる高速化を実現するコンピューティング基盤のアーキテクチャーの探索・設計 
(3) 上記アーキテクチャーを最大限に生かし、かつ移植性を担保するコンパイラなどのソフトスタックを開発 
(4)(1)から(3)で実現した新たなコンピューティング基盤上で各種アプリケーションの動作を解析し最適化

4. 両者の役割:

  • 富士通: アプリケーション高速化と効率化に向けたアーキテクチャーの強化や計算リソースの動的最適化などの技術に関し、コンピューティング基盤への適用に向けた評価と検証を行い、効果が見込める要素技術を次世代コンピューティング基盤向け技術として抽出し、製品適用に向けた拡張やハードウェア・ソフトウェアの協調などの応用研究を行う。
  • 東京工業大学: 大規模AI処理や流体解析をはじめとする科学技術計算などのアプリケーションを高速利用するために必要なコンピューティング技術を、アプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの各専門分野の観点から提案し、富士通と共にその性能や機能面での評価をプロトタイピング環境で実施する基礎研究を行う。
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図. 協働研究拠点の目指すところ

5. 体制:

  • 協働研究拠点長:増原 英彦 学院長・教授 東京工業大学 情報理工学院
  • 副拠点長 遠藤 敏夫 教授 東京工業大学 学術国際情報センター 先端研究部門
  • 副拠点長:赤星 直輝 フェロー(コンピューティング担当) 富士通株式会社 富士通研究所 研究本部
  • 参画教員:金森 敬文 教授 東京工業大学 情報理工学院
         坂本 龍一 准教授 東京工業大学 学術国際情報センター 先端研究部門
         横田 理央 准教授 東京工業大学 学術国際情報センター 先端研究部門
         大西 領 准教授 東京工業大学 学術国際情報センター 先端研究部門
  • 富士通と東京工業大学の双方から合計約20名の研究者が所属し、将来的に人員を拡大していく。

今後について

両者は今後、アプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの技術分野で横断的に研究開発を進めるために、さまざまな研究機関や企業との共創の場を形成し、既存のコンピューティング基盤の性能を大きく向上させる要素技術の確立と、その応用範囲の拡大を達成することで、持続可能な社会を実現するイノベーションの創出を目指します。また、将来のコンピューティング分野の拡大と発展を見据えて本分野の人材育成にも産学一体となって取り組んでいきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

注1 富士通株式会社:本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
注2 国立大学法人東京工業大学:本部 東京都目黒区、学長 益 一哉。
注3 富士通スモールリサーチラボ:富士通の研究員が大学内に常駐または長期的に滞在し、共同研究の加速、新規テーマの発掘、人材育成および大学との中長期的な関係構築を目指す取り組み。
注4 東京工業大学協働研究拠点制度:「企業ニーズに寄り添う」ために、拠点内に「研究企画室」を設置し、現在あるテーマのみならず、新たな研究テーマの創出を図り、持続的な連携の場の実現を目指す制度。
注5 東京工業大学オープンイノベーション機構:東京工業大学において、産業界と密接に連携しつつ、新規事業開拓から社会実装までを総合的に目指した共同研究を進める協働研究拠点制度を中心として大型の共同研究を推進する組織。
注6 スーパーコンピュータ「富岳」:スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所に設置された計算機。2020年6月から2021年11月にかけて世界のスーパーコンピュータに関するランキングの主要4部門において4期連続で1位を獲得するなど、世界トップクラスの性能を持つ。2021年3月9日から共用開始。
注7 液浸技術:冷媒で満たした液浸槽の中にサーバ、ストレージ、ネットワークなどのIT機器を浸し、冷媒を冷却、循環させることで機器の発熱を冷却する技術。

関連リンク

東京工業大学オープンイノベーション機構

本件の参照先:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/10/20.html

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