AIによる理工学・人文社会学など様々な分野の課題解決策発見に向けた研究推進
富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:時田 隆仁、以下、富士通)と、国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:大野 英男、以下、東北大学)は、様々な分野の課題に対する解決策をデータからAI(人工知能)によって発見する「発見知能」の開発および社会実装を推進する研究開発連携拠点として「富士通×東北大学 発見知能共創研究所」を2022年10月1日に設置しました。本連携拠点は、富士通が推進する「富士通スモールリサーチラボ」(注1)の取り組みの一環であり、東北大学における共創研究所(注2)の制度を活用して東北大学青葉山キャンパスに設置するものです。
富士通はこれまで、様々なデータから重要な因果関係を網羅的に抽出し新たな発見へ導く「因果発見技術」の研究開発、および化学や医学などの幅広い分野への技術適用を進めてきました。東北大学では、数理科学と材料科学の連携に関する研究を材料科学高等研究所(WPI-AIMR、注3)において先駆的に取り組むとともに、経済学など人文社会科学系を含めた様々な学術分野への数理技術の展開にも取り組んできています。
本連携拠点では、富士通の「因果発見技術」と東北大学の学術研究を組み合わせ、多数の因果関係から効果的に解決策を発見する「発見数理技術」を開発し、その社会実装に向けて、要素技術の開発のみならず、様々な分野の課題解決への応用可能な「発見知能」の実現にも取り組むとともに、実際に社会課題の解決に取り組む人材の育成を進めていきます。
背景
近年、物質の特性や自然界の現象あるいは人間や社会の活動などに関する膨大なデータが蓄積され、利用可能となりつつあります。これらのデータには様々な社会課題を解決する鍵が内在すると考えられている一方、データ同士の相関関係は確認できても、解決策につながる情報を見出すことは容易ではなく、専門家の経験などに頼っていることが多いのが実情です。こうした課題の解決には、その問題に関わる重要な要因を特定したうえで、データ同士の原因と結果を表した因果関係を抽出する必要があると考えられています。
また、解決策につながる情報を見出すためには、データの利活用やAIに係る技術者はもちろんのこと、人文社会科学や経済学などにも素養を持ち、現実の様々な社会課題に技術を適用し解決をはかる人材が不可欠です。
富士通と東北大学は、新しい技術の開発と人材の育成を通して社会課題の解決に資することを目的とし、互いの持つ技術・実績・知見を組み合わせた「富士通×東北大学 発見知能共創研究所」を設置し、共同研究を開始します。
「富士通×東北大学 発見知能共創研究所」について
1.期間:
2022年10月1日~2026年3月31日
2. 設置場所:
東北大学レジリエント社会構築イノベーションセンター(所在地:〒980-8578 宮城県仙台市青葉区荒巻青葉6-3(青葉山キャンパス内))
3. 研究内容:
両者は2022年度末を目標に、富士通の「因果発見技術」の利用環境を共創研究所内に構築するとともに、材料科学、経済学など解決対象とする複数の分野における社会課題を設定します。2023年度以降は、相互に技術的な連携を深め具体的な解決策の創出を進めつつ「発見数理技術」の研究開発を実施し、複数の分野における有効性の検証を経て、様々な分野の課題解決への応用可能な「発見知能」を開発します。さらに、「発見知能」を社会で広く利活用しやすいプラットフォーム化し、両者の枠に留まらず幅広い活用を目指したコミュニティを設立することなどを通じて社会課題の解決に貢献していきます。同時に、基礎研究を行う技術者や様々な社会課題に係る人文社会科学系の学問にも精通した研究者など、多様な人材育成にも取り組んでいきます。
4. 両者の役割:
- 富士通: 「因果発見技術」に基づいた「発見数理技術」の基礎から応用にわたる研究開発と、各種データで有効性を検証するためのプラットフォーム化などの利用環境の構築
- 東北大学: 「発見数理技術」の広範な科学技術分野への適用と、そこから見出された技術課題に対する数理的アプローチの検討
5. 体制:
- 運営総括責任者:樋口 博之 特任教授 [東北大学 数理科学連携研究センター]
(富士通 研究本部 人工知能研究所 発見数理プロジェクト プロジェクトマネージャー) - 運営支援責任者:水藤 寛 教授 [東北大学 数理科学連携研究センター/材料科学高等研究所]
- 参画教員:原田 昌晃 教授 [数理科学連携研究センター/情報科学研究科]
安東 弘泰 教授 [数理科学連携研究センター/材料科学高等研究所]
楯 辰哉 教授 [数理科学連携研究センター/理学研究科]
室井 芳史 教授 [数理科学連携研究センター/経済学研究科]
服部 裕司 教授 [数理科学連携研究センター/流体科学研究所] - その他、富士通と東北大学の双方から多数の研究者が参加予定。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 富士通スモールリサーチラボ:富士通の研究員が大学内に常駐または長期的に滞在し、共同研究の加速、新規テーマの発掘、人材育成および大学との中長期的な関係構築を目指す取り組み。
注2 共創研究所:東北大学内に企業との連携拠点を設けるとともに、大学の教員・知見・設備などに対する部局横断的なアクセスを可能とすることで、共同研究の企画・推進、人材育成、および大学発ベンチャーとの連携をはじめとする多様な連携活動を促進する制度。
注3 WPI-AIMR:文部科学省が2007年より開始した「世界トップレベル研究拠点プログラム(World Premier International Research Center Initiative、通称:WPI)」に採択され設立された拠点の一つである材料科学高等研究所(Advanced Institute for Materials Research、通称:AIMR)。
WPIについて https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/about/outline/wpi.html
AIMRについて https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/about/outline/