2022.7.22:SAP、2022年度第2四半期の業績を発表


(本リリースは、7月21日に弊社本社から発表された発表文の抄訳です)

SAP SE(NYSE:SAP)は、2022年6月30日に終了した第2四半期の財務業績を発表しました。

本資料は、SAP SEが発行している「SAP Quarterly Statement Q2 2022」の抄訳です。

オリジナルの資料はリンク先を参照ください。

  • クラウド売上は34%増、固定通貨換算ベースでは24%増で最大の売上源に
  • カレント・クラウド・バックログは100億ユーロを超えて34%増、固定通貨換算ベースで25%増
  • SAP S/4HANA(R)のカレント・クラウド・バックログは成長傾向がさらに拡大して100%増、固定通貨換算ベースでは87%増
  • クラウドの総利益はIFRSベースで39%増、Non-IFRSベースで38%、固定通貨換算のNon-IFRSベースでは28%増。これにより、クラウドの売上総利益率が堅調に拡大
  • 主にウクライナ情勢の影響により、IFRSベースの営業利益は32%減、Non-IFRSベースの営業利益は13%減、固定通貨換算ベースでは16%減
  • SAPは2022年度の売上とフリーキャッシュフローの見通しを再確認し、営業利益の見通し範囲を更新

SAP CEO、クリスチャン・クライン(Christian Klein)は次のように述べています。「第2四半期の業績が示すように、SAPのポートフォリオの重要性はかつてないほど高まっています。クラウドへの移行は予定より早く進み、売上予想を上回り、クラウドの売上はSAPの最大の売上源になりました。当社のパイプラインは強力で、SAP S/4HANAのカレント・クラウド・バックログが100%増という好調さに支えられ、市場シェアを拡大しています」

SAP CFO、ルカ・ムチッチ(Luka Mucic)は次のように述べています。「当四半期は、外部環境が厳しさを増す中、当社の戦略が共感を得ていることを改めて証明したと言えます。引き続き好調な売上を実現し、売上予測を上回り、クラウドの収益性も向上しています。当四半期は、ウクライナ情勢の影響を大きく受けたと認識しています。当社は、持続的な成長と収益性の拡大を実現することで、過去18カ月続けてきた大規模な成長投資を活かすことができると考えています」

業績ハイライト

カレント・クラウド・バックログは初めて100億ユーロを超え、34%増の104億ユーロ、固定通貨換算ベースで25%増となり、第1四半期の固定通貨換算ベース23%から加速し、将来のクラウド売上の強固な基盤を示しました。

クラウド売上は、SaaSおよびPaaSポートフォリオ全体の2桁成長に牽引され、34%増の30億6,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで24%増となりました。

クラウド売上総利益率は、IFRSベースで2.3パーセンテージポイント増の69.8%、Non-IFRSベースでは1.8パーセンテージポイント増の71.9%となりました。これは、次世代クラウド・デリバリー・プログラムへの投資が増加したにもかかわらず、SaaSの利益率が大幅に増加したことによるものです。売上の増大により、クラウドの売上総利益率の拡大に加えて、クラウドの総利益も堅調に伸び、IFRSベースで39%増、Non-IFRSベースで38%増(固定通貨換算のNon-IFRSベースでは28%)となりました。

IFRSベースの営業利益は32%減の6億7,300万ユーロ、IFRSベースの営業利益率は

5.8パーセンテージポイント減の8.9%でした。Non-IFRSベースの営業利益は、13%減(固定通貨換算ベースで16%減)の16億8,000万ユーロでした。Non-IFRSベースの営業利益率は、6.5パーセンテージポイント減の22.4%、固定通貨換算ベースで5.8パーセンテージポイント減でした。これは主に、ソフトウェアライセンス売上の貢献度が低下したことと、ウクライナ情勢に関連する多額の貸倒損失が発生したことによるものです。また、IFRSベースの営業利益は、主にロシアおよびベラルーシからの撤退に伴い発生した1億3,000万ユーロのリストラクチャリング費用の影響を受けています。ウクライナ情勢の直接的な財務面への影響により、IFRSベースの営業利益成長率は28パーセンテージポイント減、Non-IFRSベースの営業利益成長率は8パーセンテージポイント減(固定通貨換算ベースでは6パーセンテージポイント減)になりました。

IFRSベースの1株当たり利益は、75%減の0.29ユーロ、Non-IFRSベースの1株当たり利益は45%減の0.96ユーロでした。1株当たり利益の前年比での減少は、Sapphire Venturesによる金融収入への貢献度が、現在の市況を受けて前年同期より低かったことを反映しています。実効税率は、IFRSベースで62.2%、Non-IFRSベースで29.3%でした。前年同期比で実効税が上昇したのは、主に非課税所得と控除対象外費用の変化によるものです。Non-IFRSベースでは、控除対象外費用の変化は税引前数値の個別の調整により適用されません。

第2四半期までの6カ月累計のフリーキャッシュフローは、36%減の20億8,000万ユーロでした。前年度比の減少は、主に、収益性の推移、およびクラウドへのSAPの絶え間ない移行による運転資本からの影響によるものです。下期については、課税額の減少や収益性の改善により、キャッシュフローがより好転する見込みであるため、当年度のフリーキャッシュフローの見通しについてはこれまでどおりです。

1月13日、SAPは、自社の株式報酬プログラムが株式決済へ移ることに備えて、新たな自社株買いプログラムを発表し、4月29日にこれを完了しました。SAPは平均価格99.63ユーロで10,004,763株の自社株買いを行い、購入総額はおよそ9億9,700万ユーロでした。さらに、SAPは7月21日、約5億ユーロの新たな自社株買いプログラムを発表しました。買い戻した株式は、主に従業員に対する株式報酬プランに基づき付与される報奨金の支払いに充当されます。

ウクライナ情勢の影響

上半期において、SAPのビジネスはウクライナ戦争と、SAPがロシアとベラルーシでの事業縮小を決定したことの影響を受けました。

第2四半期のカレント・クラウド・バックログは、既存のクラウド契約を終了させたことにより約6,400万ユーロ減となり、固定通貨換算ベースのカレント・クラウド・バックログ成長率は約1パーセンテージポイント減となりました。IFRSベースおよびNon-IFRSベースの営業利益は、主にソフトウェアライセンスおよびサポート収入の減少、並びに売上債権に係る貸倒引当金の計上により、減少しました。加えて、IFRSベースの営業利益は、ロシアおよびベラルーシの従業員に対する退職金支払いと資産のさらなる減損のために発生した約1億2,000万ユーロのリストラクチャリング費用による影響を受けました。リストラクチャリング費用が予想より増加した理由は、当四半期にロシア・ルーブルが高騰したためです。IFRSベースの営業利益全体への影響は約2億8,000万ユーロ(上半期:約3億5,000万ユーロ)、Non-IFRSベースの営業利益全体への影響は約1億6,000万ユーロ(上半期:約2億3,000万ユーロ)でした。

当年度は、新規ビジネスの不足および既存ビジネスの中止により、固定通貨換算ベースで総額約3億ユーロの影響が見込まれます。Non-IFRSベースの営業利益については、上述の売上減とその他の費目により、固定通貨換算ベースでおよそ3億5,000万ユーロの影響が見込まれます。

この急激な進展状況によるその他の影響は現時点では不明であり、状況が現在の範囲を超えてエスカレートした場合には、SAPのビジネスに重大な悪影響が及ぶことも考えられます。

ビジネスハイライト

当四半期には、650社以上のお客様にSAP S/4HANAをお選びいただきました。これにより、これまで採用いただいたお客様の総数は約20,000社に増え、前年同期比15%増となりました。

そのうち14,500社以上が本稼動させています。第2四半期に新たにSAP S/4HANAを契約したお客様のうちの60%以上が新規のお客様です。

第2四半期には、ABB Information Systems、Bridgestone Australia、Capitec Bank、EisnerAmper、Hisense Group、三菱マテリアル株式会社、Moderna、Pitney Bowes、RWE、住友ゴム工業株式会社、Zoomlionなど、エンド・ツー・エンドのビジネス変革を推進される世界各国のお客様に「RISE with SAP」をお選びいただきました。また、お客様はSAPランドスケープを拡大し続けています。Microsoftは「RISE with SAP」に投資し、GlobalFoundries、HeidelbergCement、Malaysia Airlines、Mapletree Investmentsは「RISE with SAP」オファリングとその他のソリューションを組み合わせて導入しています。

SAPのソリューションポートフォリオをお選びいただいた主なお客様としては、ALTANA、Analog Devices、ASUS、BeiGene、Coop Genossenschaft、Corning、Ericsson、Fisker Inc.、FUNKE Mediengruppe、Kyndryl、Moët Hennessy、Persán、Positivo Tecnologia、Sportradar、Votorantim、Wieland-Werkeなどがあります。また、第2四半期には、Antonio Puig、CONA Services、HCL Technologies、およびWittensteinが、SAPソリューションの本稼動を開始しました。

当四半期におけるSAPのクラウド売上の実績は、すべての地域において堅調でした。ドイツにおけるクラウド売上の伸びが顕著で、また、米国、ブラジル、日本、インド、スイスも特に好調でした。

5月4日、SAPとGoogle Cloudは、両社の関係を拡大し、Google WorkspaceとSAPの主力クラウドERPであるSAP S/4HANA(R) Cloudを新たに統合することを発表しました。

5月11日、SAPとIBMは、長年のパートナーシップにおける最新のマイルストーンを発表しました。

IBMは自社の成長を促進し、顧客サポートを向上させることを目的として、SAP(R) ERPソフトウェアをベースにした世界最大級の企業変革プロジェクトを実施します。

5月18日、SAPは、SAP SEの年次株主総会において、エグゼクティブボードおよびス-パーバイザリーボードのすべての議案が承認されたことを発表しました。スーパーバイザリーボードには、ハッソ・プラットナー(Hasso Plattner)工学博士、ルーベン・ウェストファレン(Rouven Westphal)博士、ガンナー・ウィーデンフェルス(Gunnar Wiedenfels)博士が再選され、ジェニファー・シンゼ・リ(Jennifer Xin-Zhe Li)氏がメンバーに選出されました。今回の選任により、スーパーバイザリーボードは男女均等になりました。また、報酬報告書が承認されたほか、メンバーの交代を円滑に行うため、

2022年度の監査法人としてKPMG、2023年度の監査法人としてBDOが選ばれました。さらに、2021年度の1株当たり2.45ユーロの配当案が承認されました。この金額には、当社の設立50周年を記念した特別配当金、0.50ユーロが含まれます。

セグメント別業績概要

2022年の年初に、各「サービス」のセグメントは、それまでの「Applications, Technology & Support」セグメントに統合され、新たに「Applications, Technology & Services」と改称されました。

そのため、SAPの報告対象のセグメントとしては、「Applications, Technology & Services」と、「Qualtrics」の2つのセグメントになりました。

また、「Applications, Technology & Services」分野において、主に製品およびソリューションに特化した活動のために発生している特定のマーケティング費用は、現在この分野の業績に計上され、SAPのコーポレート機能には割り当てられません。

Applications, Technology & Services(AT&S)

AT&Sセグメントの売上は、前年同期比11%増の71億1,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで4%増でした。SAP S/4HANAおよびSAP(R) Business Technology Platformによるクラウド売上が力強い伸びを見せたことで、セグメントの業績が押し上げられました。ソフトウェアライセンス売上は、「RISE with SAP」オファリングを採用する顧客の増加によるクラウドへの移行を受けて、減少しました。セグメントのサポート売上は、前年同期比5%増の29億8,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで横ばいでした。

Qualtrics

Qualtricsセグメントの売上は、前年同期比57%増の3億3,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで39%増でした。大幅な伸びが続いていることの要因は、堅調な更新率と契約数の拡大です。LINE Plus、Merck KGaA、ニューヨーク市教育局、PGA TOUR、PNC Financial Services Group、Progress Residential、Scarlet Health、Tata Digital、Toyota North America、Venues NSWなどの多くのお客様にQualtrics Experience Management Solutionsをお選びいただきました。 

2022年度の見通し

SAPではそのクラウド主導の戦略を推進しており、これにより新規ビジネスと既存顧客によるクラウド採用の両面でクラウドの伸びが加速しています。SAPのクラウドの勢いは、そのペースと規模から、中期的な目標に向けて順調に進んでいると言えます。

財務見通し

2022年度通年の見通しは以下のとおりです。

  • 営業利益が、Non-IFRSの固定通貨換算ベースで76~79億ユーロ(2021年度=82億3,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで4%~8%減となる見込みです。更新されたNon-IFRSベースの営業利益見通し範囲は、ウクライナ情勢による2022年のNon-IFRSベースの営業利益への影響(固定通貨換算ベースで約3億5,000万ユーロ)とソフトウェアライセンス収入の顕著な減少が続く可能性を反映したものです。前回の報告では固定通貨換算ベースで78億~82億5,000万ユーロと見込んでいました。
    ウクライナ情勢による総収益への影響が固定通貨換算ベースで約3億ユーロと予想され、現在のマクロ環境で顧客のアップフロントソフトウェアライセンス収益がクラウドへとさらに移行している中で、SAPの2022年度の見通しは以下のとおりです。
  • クラウド売上は、固定通貨換算ベースで115億5,000万~118億5,000万ユーロ(2021年度=94億2,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで23%~26%増となる見込みです。
  • クラウドおよびソフトウェアの売上は、固定通貨換算ベースで250億~255億ユーロ(2021年度=240億8,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで4%~6%増となる見込みです。
  • 予測可能性の高い売上(クラウド売上とソフトウェアサポート売上の合計として定義)の比率が約78%(2021年度=75%)に達する見込みです。
  • フリーキャッシュフローは、45億ユーロ超(2021年度=50億1,000万ユーロ)となる見込みです。

また、SAPは2022年通年の実効税率見通し(IFRSベース)を34.0%~38.0%(前回:28.0%~32.0%)に更新しています。この調整は、主に控除対象外費用の見通しを修正したこと、および現在の市況に鑑み、Sapphire Venturesの2022年の財務利益 貢献度を低く見積もったことによるものです。更新された控除対象外費用はNon-IFRSに含まれないため、SAPは引き続き2022年通年の実効税率(Non-IFRSベース)を23.0%から27.0%と予想していますが、この範囲の上限となる見込みです。

SAPの2022年度通年の見通しは固定通貨換算ベースですが、実通貨ベースで報告される数値については、為替レートの変動による影響を今後も年間を通して受ける見込みです。第3四半期および2022年度の為替の影響の見込みについては、下記を参照してください。

2022年6月のレートを適用した場合の為替の影響見込み

単位:パーセンテージポイント              2022年度第3四半期            2022年度通年
クラウド売上の成長                                  +8pp~+10pp                +7pp~+9pp
クラウドおよびソフトウェア売上の成長         +5pp~+7pp                  +4pp~+6pp
営業利益の成長(Non-IFRS-ベース)              +3.5pp~+5.5pp            +2.5pp~+4.5pp

財務以外の見通し

SAPは現在、2022年の従業員エンゲージメント指数を80%~84%の範囲になると予想しています(前回:84%~86%)。

引き続き、2022年度の目標は以下のとおりです。

  • 顧客ネットプロモータースコアで11~15(2021年度=10)を達成 
  • 二酸化炭素のネット排出量で70キロトン(2021年度=110キロトン)を達成 

2025年度目標

2023年に営業利益を2桁成長させるというコミットメントを含め、2020年第3四半期決算発表で公開した中期的な目標に変更はありません。SAPは、引き続き好調なクラウド事業と直近の有利な為替レートの推移を反映して、翌四半期以降、中期的な目標を更新する予定です。

追加情報

本プレスリリースおよびそれに含まれるすべての情報は予備的であり未監査です。

SAPの業績指標

当社の主要な成長指標と業績指標、その算出方法、その有用性、およびその限界に関する詳細については、当社のInvestor RelationsのWebサイト、SAP Performance Measuresをご覧ください。

以上

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