2022.2.25:三菱ガス化学が日立との協創を通じ、半導体材料などの新素材開発をDX化 (日立製作所)


新素材探索の精度向上と実験時間短縮を通じて気候変動問題の解決に寄与

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素材開発のDX推進に向けた両社の協創

  三菱ガス化学株式会社(以下、三菱ガス化学)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、三菱ガス化学の機能化学品事業部門において、AIやデータ解析により新材料や代替材料を効率的に探索するマテリアルズ・インフォマティクス*1(以下、MI)など先進のデジタルソリューションを活用し、半導体材料において目標性能を満たす新素材探索の精度を約50%程度向上するほか、新素材探索に必要な実験時間を30~50%短縮することを確認しました。

  三菱ガス化学は、経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)において、2030年度「カーボンネガティブ*2技術の事業化」を目標に、CO2などを原料とした環境貢献製品の技術開発を通じて、気候変動問題の解決に寄与することを掲げています。オープンイノベーションによる協創は、目標達成に向けたアクションプランの一つであり、両社の協創は、その取り組みの一環となるものです。

  今後、新規事業の創出や育成の加速に向け、研究開発部門における高効率な新素材開発のDXにより競争力を強化するとともに、研究開発から製造まで最適化されたエンジニアリングチェーンでつなぎ、革新的な生産改革の実現をめざします。また、プロセスの技術革新やライフサイクル全体での温室効果ガス排出量に配慮した環境貢献製品の技術開発の推進により、事業を通じた気候変動問題の解決に寄与します。

*1 大量の材料データからAIなどを用いてデータ同士の関係性を見出すことにより、新素材開発を高度化、加速する手法
*2 経済活動によって排出されるCO2などの温室効果ガスよりも吸収する温室効果ガスが多い状態のこと

背景

  2020年10月、政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」を宣言し*3、製造業では、地球温暖化への対応を持続可能な成長の機会と捉えるなど、積極的に気候変動問題への対策を推進することが求められています。

  三菱ガス化学では、2021年度から3年間の中期経営計画「Grow UP 2023*4」において、「環境変化に強い収益構造への転換」と「社会的価値と経済的価値の両立」を目標に掲げ、競争優位となる差異化事業のさらなる拡大や長期的な視点での温室効果ガスの排出削減など取り組みを進めています。

  ユーザーニーズに直結した高屈折率レンズ材料などの先端製品の開発に注力する機能化学品事業において、2019年から、日立を協創パートナーとして、研究プロセスの高度化と効率化を行ってきました。データの可視化と予測に基づく素材開発のDXにより、特色ある高付加価値製品の提供に向け、MIのさらなる活用を推進しています。

*3 経済産業省ホームページ
*4 三菱ガス化学ホームページ 中期経営計画「Grow UP 2023」資料

協創の内容と成果について

  三菱ガス化学の機能化学品事業部門では、日立のLumada*5で展開する「材料開発ソリューション*6」を活用することにより、CO2由来の素材を用いた仮想実験などにおいて、新素材探索の精度向上と実験時間短縮など、素材開発の効率化による環境負荷の軽減に貢献しています。

1.最適組成探索のための仮想実験により、実験回数削減や実験精度向上を実現

  これまで、熟練者が手作業で、大量の原材料とその配合比率のパターンから、新規の高機能ポリマーや半導体材料の条件探索をしており、工数を要していました。今回、MIを用いた仮想実験により、新素材に要求される特性を満たす素材の組み合わせの探索に成功しました。本技術により、従来、人手での作業で膨大な時間を要していた新素材の条件探索が効率化し、開発期間を大幅に短縮することができました。

2.電子顕微鏡画像と材料品質の関係性の定量化により、材料品質を安定化

  これまで、熟練者の経験をもとに、顕微鏡画像や目視観察などで材料の画像と品質の関係性を定性的に判断していたため、実験結果の再現が困難でした。今回、MIと画像解析技術を用いて、原材料の顕微鏡などの大量画像から材料性能の異常を自動識別することで、製品開発時の最終実験候補の組み合わせを従来手法の約半分程度の時間で見出すことに成功しました。本技術により、顕微鏡画像から材料品質を定量的に判断でき、製品開発時の品質安定化を実現しました。

3.研究計画・実験データ・研究プロセスの統一的な蓄積・利活用により、研究者間の情報共有を円滑化

  これまで、実験が複数工程に跨るため、研究計画と結果の関係性を把握することが困難でした。今回、実験データを管理するサービスを用いて、研究計画、実験データ、計画・承認・実行などの研究プロセスの統合化・可視化、研究者間での実験情報の共有を実現しました。これにより、研究における依頼・承認などのステータス管理や過去の実験データの検索が容易になり、新規樹脂開発の合成に関する実験管理時間を30~50%削減することができました。

*5 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称
*6 「材料開発ソリューション」:MIによるお客様の新材料の開発を支援するサービス。材料開発に関する膨大なシミュレーションデータや実験データの可視化・高速な分析を容易に行うことができるクラウドサービス「材料データ分析環境提供サービス」、日立が材料データをお預かりして、お客さまの研究開発に最適なAIなどを開発し、分析を代行する「材料データ分析サービス」などを提供。

今後の展望について

  両社は、研究開発や生産のデジタル化を通じ、気候変動問題解決に貢献し、2050年度カーボンニュートラルの達成に貢献していきます。日立は、Lumadaを中心とした新素材開発のDX加速に向けたソリューションの拡充・強化を図り、三菱ガス化学は幅広い化学の力でエネルギー・気候問題解決に貢献し2030年度までにカーボンネガティブ技術の事業化をめざします。

日立製作所について

  日立は、データとテクノロジーで社会インフラを革新する社会イノベーション事業を通じて、人々が幸せで豊かに暮らすことができる持続可能な社会の実現に貢献します。「環境(地球環境の保全)」 「レジリエンス(企業の事業継続性や社会インフラの強靭さ)」 「安心・安全(一人ひとりの健康で快適な生活)」に注力しています。IT・エネルギー・インダストリー・モビリティ・ライフ・オートモティブシステムの6分野で、OT、ITおよびプロダクトを活用するLumadaソリューションを提供し、お客さまや社会の課題を解決します。2020年度(2021年3月期)の連結売上収益は8兆7,291億円、2021年3月末時点で連結子会社は871社、全世界で約35万人の従業員を擁しています。
日立のウェブサイト

三菱ガス化学について

  三菱ガス化学は、生産品目の90%以上を自社開発技術で製造するユニークな化学会社です。創業以来、新しい技術と価値の創造に取り組み、メタノールやキシレン、過酸化水素といった基礎化学品から、高機能エンジニアリングプラスチック、発泡プラスチック、半導体パッケージ材料、脱酸素剤「エージレス®」に至る機能製品まで、幅広い事業分野を通じて人々の暮らしを支えてきました。三菱ガス化学は、これからも化学にもとづく幅広い価値の創造を通じて、社会の発展と調和に貢献します。
三菱ガス化学のウェブサイト

本件の参照先:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/02/0225.html

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