人文社会科学や計算機科学を融合したコンバージングテクノロジーでスマートシティーを実現
富士通株式会社(注1)(以下、富士通)とCarnegie Mellon University(注2)(以下、カーネギーメロン大学)は、このたび、スマートシティーの実現に向けて、行動経済学や行動科学といった人文社会科学と計算機科学を融合したコンバージングテクノロジー(注3)により、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現するとともに、人々の行動特性に基づく未来の行動や起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援するソーシャルデジタルツイン(注4)の共同研究を2022年2月より開始します。
両者がスマートシティーの重要テーマとして掲げる都市交通や環境、経済などの分野における様々な施策実施にあたり、人々の行動をソーシャルデジタルツインで事前検証し、施策の効果や潜在的なリスクを事前に把握することで、各施策の効果を最大化できます。加えて、実世界の人々の動きや移動手段の変化などのリアルタイムデータをソーシャルデジタルツインへ取り込むことで、施策の改善や人々の行動変容を促すことが可能になります。
共同研究技術の社会実装に向けては、交通規制や車両移動状況などの実データを用いて、動的に人流の発着地を推定して交通量の管理や調整を行うことで、CO2排出などの環境問題や経済効率などの都市問題を解決するための施策の有効性を検証していきます。これにより、都市における人々の動きに関するソーシャルデジタルツインの基盤技術の構築および確立を目指します。
共同研究の概要
本共同研究では、ソーシャルデジタルツインの基盤となる技術の研究開発に取り組み、人や物、経済、社会の相互作用をデジタルに再現し、それらの実態を把握することで、多様で複雑化する様々な課題の解決に向けた施策立案などを支援します。
例えば、2次元情報から3次元情報を推定するニューラルレンダリング技術を用いて、カメラ映像から設置角度や障害物との重なりにより部分的に見えない人の動きを仮想的に生成し、的確に捉える高度なセンシング技術や、好みや状況により変化する人々の行動特性に関する行動科学や行動経済学の知見とAIを融合した行動予測技術を開発します。また、人々の行動と物や経済、社会との関係性を実世界の変化に追従してデジタルに再現するためのヒューマンモデルとソーシャルモデルを構築し、ソーシャルデジタルツイン上で各種施策の事前検証を進めます。これにより、多様で複雑な社会課題を解決する有効な施策を効率良く導き、将来的には、施策目標達成に向けた人々の行動変容を促す働きかけを可能にするなど、ソーシャルデジタルツインと実社会がより良い社会の実現に向けてともに進化する世界を創り出します。
これらの開発技術を、環境、交通渋滞、経済効率などの都市問題の解決に向けた実証実験に適用し、その効果検証を行います。例えば、ソーシャルデジタルツイン上で、都市の道路網における交通量の実データを活用し、日々変化する交通需要を動的に把握できるモデルを構築し、交通量にあわせた車両規制や通行料を変動させるロードプライシングなどを事前検証することで、都市交通の施策の有効性を検証します。
今後の展望
富士通とカーネギーメロン大学は、ソーシャルデジタルツインを活用した交通渋滞や経済効率の検証だけではなく、CO2排出量の削減などの環境問題の解決と都市交通の利便性を向上させるきめ細かな施策などの検証を進めていくとともに、今後も継続する可能性のある新型コロナウイルス感染症などのパンデミック抑止と経済成長を両立させる施策の実施や、状況に応じた医療資源の最適配分により人々の安全・安心な暮らしを守るサステナブルな次世代のスマートシティーの実現を支援していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
注2 Carnegie Mellon University:
所在地 米国ペンシルベニア州、学長 Farnam Jahanian。
注3 コンバージングテクノロジー:
特定の目的を達成するために2つ以上の異なる分野の科学や技術を融合した技術。今回の共同研究では、持続可能な社会の実現に向けて多様で複雑化する都市の課題を解決するために、人文社会科学と計算機科学の融合領域の研究開発に取り組む。
注4 ソーシャルデジタルツイン:
人や物、経済、社会の相互作用をデジタルに再現し、社会の実態を把握することで、多様で複雑化する課題の解決に向けた施策立案などを支援する技術群。
カーネギーメロン大学について
カーネギーメロン大学は、科学や先端技術をはじめ、経済、政策、人文科学、芸術など幅広い分野の学部を設置しており、1万3,000人以上の学生が、実世界の様々な問題に対して、学際的なコラボレーションを通じて、自ら解決策を導き出し、実施するイノベーション力を養っています。(www.cmu.edu)