米国 Autodesk 社は、米調査会社 Altimeter と共同で、企業のデジタルトランスフォーメンション(DX)の第三波とされる「コンバージェンス」(融合)に関するグローバル調査を実施しました。
本レポートでは、米国およびカナダ、英国、ドイツ、フランス、日本、中国の 6 つの地域における、建築・エンジニアリング・建設業界(AEC)および設計・製造業界(D&M)に属する企業のリーダー 749 名を対象に、企業のデジタル成熟度や業界へ影響を与えるコンバージェンスのタイプなどを調査しました。
コンバージェンスとは、個々に分断されているテクノロジーやプロセス、データを融合することで、新たな製品やサービス、エクスペリエンスを創出し、業界そのものを変革していくことを意味しています。
今回の調査では、まず始めに、企業のデジタル成熟度を 6 段階で判定するため、回答者には自社にあてはまるステージを以下から選択するように求めました。
- ステージ 0:「DX は優先事項ではなく、近い将来そうなることも予想していない」
- ステージ 1:「DX のためのビジネスケースの構築を始めたばかりである」
- ステージ 2:「カスタマージャーニーについて理解を始めたところであり、デジタルスキルの向上、プロセスのマッピング、初期的トラクションの確認段階にある」
- ステージ 3:「業務の大規模なデジタル化に着手したが、プラットフォームとプロセスの最新化は部門ごとに行われている」
- ステージ 4:「業務をデジタル化し、現在は組織全体でデータをより戦略的に使用できるように業務を統合することに焦点を当てている」
- ステージ 5:「強力なデジタル基盤を築き、現在はデータと AI を活用してプロセス、製品とサービス、顧客エクスペリエンスを最適化することに焦点を当てている」
そして、調査の結果、コロナ禍によって生じた混乱により、2 つのグループに企業が分けられることがわかりました。1 つは、デジタル成熟度が低いために、バーチャルコミュニケーション、パーソナライズされたデジタルエンゲージメント、没入型モデリング、ラピッドプロトタイピング作成、効率的なコラボレーションなどの革新的手法の導入に苦労し、いまだに追いついていない企業グループです。もう一方は、デジタル成熟度のレベルが高く、最新の革新的手法のほとんどをすでに導入し、成功している企業グループです。後者のグループは、デジタルディスラプションの次の波に備えようとしています。その波は、コンバージェンスと呼ぶ一連の市場の動きと革新的な実践であると考えています。
日本については、デジタル成熟度のステージ 4 と 5 の合計がグローバル平均を上回るものの、ステージ 0 と 1 の合計が他国と比べて最も多くなっており、特に二極化が広がっていることが明らかになりました。
続いて、コンバージェンスの影響力について尋ねたところ、デジタル成熟度が最も高い企業(ステージ 5)の 59% は、コンバージェンスは自社のビジネスへ最も重大な影響を与えるものの 1 つであると回答しています。つまり、成熟度のレベルが低い企業ほど、コンバージェンスが破壊的イノベーションのトレンドであるという認識が低いということになります。しかしながら、デジタル成熟度の低い企業は、DX のマイルストーンである実践やイノベーションの導入に労力を割かれる段階であるため、この結果は致し方ないこととも言えます。
但し、これは、成熟度の低い企業は、より高いステージのデジタル成熟度に到達しないと、コンバージェンスについて考え、準備することができないという意味ではありません。実際、ステージ 5 に到達してコンバージェンスのメリットを享受するには、できるだけ早くコンバージェンスの基盤を構築する必要があります。
DX の基盤を構築する最初のステップは、コンバージェンスのあらゆる形態を理解し、ビジネスに最も影響を与えるカテゴリを特定することです。
今回の調査により、コンバージェンスには 4 つのレベルがあることがわかっています。
- プロセス コンバージェンス:個々に分断されたプロセスとワークフローをビジネス全体で連携させることにより、効率性が飛躍的に向上し、統合された目標を掲げることが可能になっている。
- テクノロジー コンバージェンス:クラウド、IoT、AI、サプライチェーン、AR、VRなどのテクノロジーが、コンバージェンスを通じて新しいユース ケースとソリューションを実現している。
- データ/情報コンバージェンス:以前はサイロ化されていたデータ/情報がアクセスしやすいものとなり、ビジネスや業界全体で活用され、さまざまな新製品やサービスが提供されている。
- 業界コンバージェンス:それぞれに分断されていた業界がより連携できるようになり、価値創造の新たな機会を生み出している。
このように、コンバージェンス レベルを作成することで、それぞれのコンバージェンス タイプが与える影響と、それが業界によってどのように異なるかをグラフ化することができます。
コンバージェンスのメリットは、デジタル成熟度のどのステージにおいても明らかですが、これらのメリットを十分に発揮させるために、多くの企業が必要な手順を実装する上で多くの課題に直面します。主なものは次のとおりです。
- 社会文化:多くの企業、特に従来のシステムと業務プロセスに慣れている大企業では、変化への抵抗が問題となっています。
- 機械学習向けデータ:コンバージェンスによってもたらされる革新的なプロセスの多くは、AI の力によって実現されます。AI は、効率を向上させる強力なテクノロジーですが、導入方法を誤るリスクもあります。AI エンジンに古い、または偏ったデータを供給すると、機械がそれをもとに学習を継続し、間違った積み重ねを行うという雪玉効果が起こります。
- コンバージェンスを考慮した設計:コンバージェンスを意図して設計を行うには、これまでよりもはるかに広い視野と先見性、秩序を重視した思考が設計者とプロジェクトプランナーに求められます。そのためには、このような考え方を促進するためのトレーニングやツールを使いこなすことが必要です。
- 適切なスキルを持つ人材の採用:他のイノベーションと同様に、コンバージェンスを成功させるために必要なスキルを持つ人材を見つけることは困難です。特に、ディスラプションに乗り出す初期段階において、それらの人々は希少な人材であり、需要が高いためです。
Autodesk のクロスインダストリーストラテジストであるアレクサンダー・スターンは次のように述べています。
「コンバージェンスを理解し、組織のために活用することから得られる競争優位性は、十分に活用されているとは言えません。プロセス、データ、テクノロジーのコンバージェンスは、主に企業の社内業務に影響を与えますが、外的な力で推進される業界のコンバージェンスでは、驚くようなことが起こり得ます。これまで全く関係ないと思われていた業界や、交わることなく活動してきた業界が、相互利益のために協力し始めるのです。このコラボレーションには、パートナーシップ、取引関係、単なるリソース共有など、さまざまな形態が考えられるでしょう」
Altimeter の創設者兼シニア フェローであるシャーリーン・リー氏は次のように述べています。
「自社のデジタル成熟度と最優先の投資対象が評価できれば、企業はそのデータから調査回答者をベンチマークとして、トランスフォーメーションのロードマップを描くことができます。そうすれば、企業は将来のディスラプションに備えるだけでなく、それを利用して成功へつなげることもできるでしょう」
レポートの詳細と全文のダウンロードについては、コンバージェンスの詳細ページをご覧ください。
サイト内では、コンバージェンスの理解促進にお役立ていただけるインフォグラフィックや Autodesk の最高技術責任者であるラジ・アラスと Altimeter のシャーリーン・リー氏との対談動画、また Autodesk のコンバージェンスへの取組みについてまとめた記事コンテンツをご用意しています。
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