<抄訳版>
SAPのクラウドの勢いが大幅に加速、「RISE with SAP」の採用が好調に拡大
SAP SE(NYSE:SAP)は2021年第3四半期の業績を発表しました。
本資料は、SAP SEが発行している「2021 Q3 Quarterly Statement」の抄訳です。
オリジナルの資料はリンク先を参照ください。
- 進行中のクラウドバックログが24%増(固定通貨換算ベースで22%増)
- SAP S/4HANA(R)の進行中のクラウドバックログが60%増(固定通貨換算ベースで58%増)
- クラウド売上が20%増(固定通貨換算ベースで20%増)
- IFRSベースの営業利益は15%減、Non-IFRSベースの営業利益は2%増(固定通貨換算ベースで2%増)
- 好調な第3四半期の業績を背景に通年の売上および利益の見通しを上方修正
SAP CEOのクリスチャン・クライン(Christian Klein)は次のように述べています。「当社の戦略が機能していることは明らかです。お客様は、クラウドによるビジネス変革の推進にSAPを選択されています。当社のアプリケーションとプラットフォームの導入状況は過去最高を記録しています。その結果、当社のクラウド事業の成長が力強く加速しました」
SAP CFOのルカ・ムチッチ(Luka Mucic)は次のように述べています。
「主要財務指標がすべてすばらしい四半期でした。SAPのトランスフォーメーションが力強く進展し続けていることがわかります。当社のクラウド事業が成長するペースは加速しており、その結果、通年の見通しが上方修正されました」
2021年度第3四半期最新情報
世界中の企業が、パンデミックを原因とする激烈な変化、およびデジタルトランスフォーメーションを今後も推し進めるという方針を前提として、ますます切迫感をもって自社のビジネスモデルを再評価しています。SAPは、その明確に差別化された機能でお客様に選ばれています。SAPは、お客様による技術的移行の管理だけでなく、エンド・ツー・エンドのコアビジネスプロセスの再定義および最適化も支援します。こうした専門知識は、さまざまな業界と地域にわたってあらゆる規模のお客様と協力してきたSAPならではの、業界別ベストプラクティスに関する比類ない知識に基づいています。この点は、市場の期待を上回った、SAPの好調な第3四半期の業績に反映されています。
「RISE with SAP」サービスの需要および導入が好調を維持しています。ビジネス変革を管理できるこのサービスは、増加する大企業のお客様を含め、あらゆる規模のお客様に選ばれています。この包括的なサブスクリプションサービスを導入するお客様の増加に伴い、ソフトウェアライセンス売上は予想通り減少しました。
クラウドポートフォリオ全体、特にSAP S/4HANA(R) Cloudで、進行中のクラウドバックログが好調に増加しています。SAPのクラウド売上の成長は引き続き加速しました。
ハイライト
- 2021年1月に順調なスタートを切った「RISE with SAP」は引き続き勢いを増しています。あらゆる事業規模の企業から強い引き合いがあり、当第3四半期中に300社を超えるお客様と成約に至りました。Asda Stores社、EGグループなどの大手のお客様に「RISE with SAP」をお選びいただきました。さらに、シルク・ドゥ・ソレイユ社、Philips Domestic Appliances Netherlands社、HCL社、Rohm社、Etihad Water and Electricity社、Tate & Lyle Americas社、KTM Fahrrad社、Ingram Micro社、Sky Italia社、朝日インテック株式会社にも契約いただきました。
- 当四半期にSAP S/4HANAのお客様は500社以上増加しました。これにより、これまで採用いただいたお客様の総数は17,500社を超え、前年同期比16%増となりました。そのうち11,400社以上が本稼動させています。第3四半期に新たにS/4HANAを契約したお客様のうちの約60%が純新規顧客です。日本では、大和ハウス工業株式会社、株式会社神戸製鋼所に選択いただきました。
- SignavioはSAPのBusiness Process Intelligence(BPI)セグメントの一員として引き続き目覚ましい業績を上げました。進行中のクラウドバックログは3桁の増加を見せました。SAPのBPIソリューションは、お客様がビジネス変革を進め、クラウドへの移行を加速させる上でのかぎとなるものです。第3四半期にはDB Schenker社をはじめ多くのお客様にSAP BPIソリューションを選択いただきました。
- SAPが提供するPaaSサービスであるSAP(R) Business Technology PlatformはIntelligent Enterpriseの基盤であり、SAPのポートフォリオ全体およびSAP以外のソリューションの統合と拡張のための単一のプラットフォームを提供し、データからインサイトを導き出します。SAPは、ガートナー社が発行した「Magic Quadrant for Enterprise Integration PaaS(エンタープライズiPaaS分野のマジック・クアドラント)」レポートにおいて競合他社に先んじて2年連続でリーダーに認定されました。進行中のクラウドバックログは好調に2桁の増加を見せました。第3四半期にはDufry International社、ヤマハ株式会社、ソフトバンク株式会社、Office Depot Mexico社、Reckitt社の各社に本サービスを選択いただきました。
- SAPは、データおよび業務プロセスを比類ないレベルで可視化、把握することを可能にするソリューションを提供し、サステナビリティを収益性のあるものに、そして収益性をサステナブル(持続可能)なものにすることを目指しています。このたびSAP(R) Product Footprint Managementの提供を開始し、お客様によるサプライチェーンにおけるカーボンフットプリントの削減の取り組みを支援していきます。今後、お客様が製品設計にサステナビリティを組み込めるようにするSAP(R) Responsible Design and Production、ならびに各企業がネットゼロに向けた自社の取り組みの進捗について的確に情報開示できるようにするSAP(R) Sustainability Control Towerを提供していきます。
- 主なお客様では、Continental社、Adidas社、Bayer社、Robert Bosch社、米国国防総省、Siemens Energy社、フロリダ大学、VMware社、イングランドサッカー協会、 FAW-Volkswagen Automotive社、中国人民保険集団(PICC)社、旭化成株式会社、セコム株式会社などにSAPのソリューションポートフォリオをお選びいただきました。また、Lycamobile社、E.ON社、Atos社、Generali China Life Insurance社が第3四半期にSAPソリューションの本格稼動を開始しました。
- SAPはクラウドによるビジネス変革を加速させることを目指し、Google Cloudと提携しました。この提携を拡大することを通じ、お客様のビジネス変革の実行、重要なビジネスシステムのクラウドへの移行、既存のビジネスシステムの強化を支援します。
- 2021年9月、SAPはDediq社と共同で金融サービス業界向けの合弁事業SAP Fioneerを設立しました。SAP Fioneerでは、スピード、拡張性、費用効率というニーズに銀行および保険会社が応えていけるよう支援していきます。
- 2021年10月1日、Qualtricsはオムニチャネル会話分析技術のリーダーであるClarabridge社の買収を完了しました。この買収により、世界ナンバーワンのエクスペリエンス管理プラットフォームとしてのQualtricsの成長と地位の強化を一層加速していきます。
2021年度第3四半期の業績
第3四半期はSAPのクラウドの勢いがさらに増し、進行中のクラウドバックログおよびクラウド売上が引き続き成長しました。進行中のクラウドバックログは、24%増の81億7,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで22%増でした。Concurのバックログは引き続き横ばいで、バックログの増加全体のうち3パーセンテージポイントがConcurのバックログの増加によるものでした。クラウド売上は、20%増の23億9,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで20%増となりました。Intelligent Spendビジネス以外のSaaS/PaaSクラウド売上は27%増、固定通貨換算ベースで27%増でした。ソフトウェアライセンス売上は、前年同期比8%減の6億6,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで8%減でした。クラウドおよびソフトウェア売上は、7%増の59億1,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで6%増となりました。サービス売上は、前年同期比6%減の9億3,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで6%減でした。この減収は主に2020年11月のSAP(R) Digital Interconnectの売却によるものです。2020年度第3四半期のサービス売上のうち約8,100万ユーロがSAP Digital Interconnectによるものでした。総売上は、前年同期比5%増の68億4,000万ユーロ、固定通貨換算ベースで5%増となりました。
第3四半期の予測性の高い売上の比率は、前年同期比3パーセンテージポイント増の77%に達しました。
IFRSベースの営業利益は15%減の12億5,000万ユーロ、IFRSベースの営業利益率は4.3パーセンテージポイント減の18.2%でした。これは株式報酬費用の増加(主にQualtricsに関連)によるものです。Non-IFRSベースの営業利益は2%増の21億ユーロ、固定通貨換算ベースでは2%増で、Non-IFRSベースの営業利益率は0.9パーセンテージポイント減の30.7%、固定通貨換算ベースでは0.7パーセンテージポイント減でした。IFRSおよびNon-IFRSベースの営業利益には、金融サービス業界向けに特化したSAPとDediq社の合弁事業SAP Fioneerの立ち上げに関連する7,700万ユーロの売却益が含まれています。
1株あたり利益は、Sapphire Ventures社の引き続き好調な業績も含め、IFRSベースで10%減の1.19ユーロ、Non-IFRSベースで2%増の1.74ユーロでした。
2021年度第3四半期までの9カ月累計の営業キャッシュフローは、前年同期比3%減の49億5,000万ユーロでした。フリーキャッシュフローは、前年同期比1%減の41億3,000万ユーロでした。株式報酬の支出および事業構造改善に関する支出が減少したことによるポジティブな影響がありましたが、税還付後の正味法人所得税支払額が増加したため、相殺されました。当四半期末時点の純負債はマイナス36億2,000万ユーロでした。
財務情報開示の拡大 - SAPのクラウド移行の加速
SAPは、2021年度から財務情報開示の範囲を拡大し、コアとなるERPビジネスをクラウドへ移行する取り組みについて透明性の高い情報を投資家に提供しています。具体的には、SAP S/4HANA Cloudが貢献した進行中のクラウドバックログおよびクラウド売上を、名目通貨ベースと固定通貨換算ベースの前年同期比成長率とともに開示しています。
第3四半期のSAP S/4HANAの進行中のクラウドバックログは、Non-IFRSベースで60%増の12億8,000万ユーロ、固定通貨換算ベースでは58%増でした。SAP S/4HANAのクラウド売上の増加は予想通り加速し、46%増の2億7,600万ユーロ、固定通貨換算ベースでは46%増でした。
SAP S/4HANA Cloudとは、コアERPプロセス向けのSAPのクラウドサービスです。主に財務管理、サプライチェーン管理、エンジニアリングおよび製造、受注管理および設備資産管理のクラウドソリューションと、関連するデータ管理、分析、開発および統合機能が含まれます。
クラウドでビジネス変革を実現するSAPの総合的なサービスである「RISE with SAP」は、SAP S/4HANA CloudとSAP Business Technology Platformの導入を促進する重要な要素です。
2021年度第3四半期のセグメント別業績
SAPの3つの報告セグメントである「Applications, Technology & Support」、「Qualtrics」および「サービス」の業績は以下に示すとおりです。
Applications, Technology & Support(AT&S)
AT&Sセグメントの売上は、前年同期比5%増の57億6,000万ユーロ、固定通貨換算ベースでは5%増でした。SAP S/4HANA Cloud、SAP(R) Digital Supply Chain、 SAP Business Technology Platform、特にeコマースにおけるSAP(R) Customer Experienceでのクラウド売上が力強い2桁の増加であったことで、セグメントの業績が押し上げられました。ソフトウェアライセンス売上は、「RISE with SAP」の採用が好調に進んだことにより、予想通り減少しました。セグメントのサポート売上は、定着率が高かったことと、サポート売上の一部がクラウドに移行したことにより、固定通貨換算ベースで前年同期比1%増でした。
Qualtrics
Qualtricsセグメントの売上は、前年同期比38%増の2億3,300万ユーロ、固定通貨換算ベースで39%増でした。お客様が「顧客」「従業員」「製品」「ブランド」という4つのエクスペリエンス領域のすべてを測定するためにQualtricsの使用量を増やすとともにQualtricsのモジュールを追加で導入していることが、高い更新率と契約数の拡大につながり、この力強い成長が継続しています。L.L.Bean社、米国コロラド州Department of Personnel and AdministrationおよびDepartment of Health、京都大学、DoorDash社、Dish Network社、ServiceNow社、Peloton社、Zoom社、全米自動車競争協会などのお客様にQualtrics Experience Management Solutionsをお選びいただきました。
サービス
サービスセグメントの売上は、前年同期比1%減の8億300万ユーロ、固定通貨換算ベースで1%減でした。Premium Engagementについては極めて回復力の高いビジネスモデルであることから引き続き売上が堅調に成長していますが、コンサルティング売上は前年同期比で減少しました。
地域別業績 2021年度第3四半期
SAPはクラウド事業において、すべての地域で好調な業績を達成しました。
欧州・中東・アフリカ地域のクラウドおよびソフトウェア売上は8%増、固定通貨換算ベースで7%増でした。クラウド売上は29%増、固定通貨換算ベースで28%増となり、ドイツ、イギリス、フランスで特に顕著でした。
南北中央アメリカ地域のクラウドおよびソフトウェア売上は6%増、固定通貨換算ベースでは6%増でした。クラウド売上は14%増、固定通貨換算ベースで14%増となり、米国、カナダ、ブラジル、メキシコで業績が堅調でした。SAPにとって最大の市場である米国ではクラウド売上の成長が引き続き好調に加速しました。
アジア太平洋および日本地域のクラウドおよびソフトウェア売上は6%増、固定通貨換算ベースで6%増でした。クラウド売上は23%増、固定通貨換算ベースで25%増となり、日本、シンガポール、韓国で特に顕著でした。
2021年度の見通し
SAPは、業績が好調であり、クラウド売上の成長が加速し続けると見込まれることから、2021年度通年の見通しを上方修正します。一方、ソフトウェアライセンス売上は、ミッションクリティカルなコアプロセスで「RISE with SAP」サブスクリプションサービスに切り替えるお客様が増えているため、通年で減少すると引き続き見込んでいます。この見通しにおいても引き続き、ワクチン接種プログラムの世界的な実施に伴ってCOVID-19危機が収束し続けると想定されています。
SAPの最新の見込みは以下のとおりです。
- クラウド売上は、Non-IFRSの固定通貨換算ベースで94〜96億ユーロ(2020年度=80億9,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで16%〜19%増となる見込みです。前回の報告では固定通貨換算ベースで93〜95億ユーロと見込んでいました。
- クラウドおよびソフトウェア売上は、Non-IFRSの固定通貨換算ベースで238〜242億ユーロ(2020年度=232億3,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで2〜4%増となる見込みです。前回の報告では固定通貨換算ベースで236〜240億ユーロと見込んでいました。
- 営業利益は、Non-IFRSの固定通貨換算ベースで81〜83億ユーロ(2020年度=82億9,000万ユーロ)、固定通貨換算ベースで2%減から横ばいとなる見込みです。前回の報告では固定通貨換算ベースで79億5,000万〜82億5,000万ユーロと見込んでいました。
SAPは引き続き、予測可能性の高い売上の比率は約75%に達する(2020年度=72%)と見込んでいます。
SAPは引き続き、営業キャッシュフローは約60億ユーロ(2020年度=72億ユーロ)となり、フリーキャッシュフローは約45億ユーロを超える(2020年度=60億ユーロ)と見込んでいます。
2021年度通年の実効税率は、IFRSベースで21.0%〜22.0%(前回見込み=21.5%〜23.0%)、
Non-IFRSベースで20.0%〜21.0%(前回見込み=20.0%〜21.5%)となると現時点で見込んでいます。
SAPの2021年度通年の見通しは固定通貨換算ベースですが、実通貨ベースで報告される数値については、為替レートの変動による影響を今後も年間を通して受ける見込みです。第4四半期および2021年度の為替の影響の見込みについては下の表を参照してください。
2021年9月の水準に基づく通年の為替の影響見込み(Non-IFRSベース)(単位:パーセンテージポイント)
- クラウド売上成長: 第4四半期が0pp〜2pp、通年が-4pp〜-2pp
- クラウドおよびソフトウェア売上成長: 第4四半期が0pp〜2pp、通年が-3pp〜-1pp
- 営業利益成長: 第4四半期が0pp〜2pp、通年が-3pp〜-1pp
2021年度、SAPは、「お客様のロイヤルティ」、「従業員のエンゲージメント」および「二酸化炭素の排出量」の3つの非財務目標に注力しています。
当年度、SAPは引き続き次のことを目指します。
- 顧客ネット・プロモーター・スコアで5〜10(2020年度=4)を達成
- 従業員エンゲージメントインデックスで84%〜86%(2020年度=86%)を達成
- 二酸化炭素排出量で9〜11万トン(2020年度=13.5万トン)を達成
以上
SAPについて
SAPの戦略は、あらゆる企業がインテリジェントエンタープライズになるよう支援することです。SAPはエンタープライズ・アプリケーション・ソフトウェア市場のリーダーとして、あらゆる業種・規模の企業の成功を支え、そのマシンラーニング、IoT、高度なアナリティクスの技術により、従業員がより価値の高い成果に集中できる企業のあり方である「インテリジェントエンタープライズ」へとすべての企業が変革できるよう支援しています。さらに、人々や組織が的確なビジネス判断を行うための洞察力を深めるサポートをし、高い競争優位性を実現するための協業を促進しています。よりシンプルになったSAPの技術により、企業はボトルネックにわずらわされずに目的に沿ってソフトウェアを最大限に活用できるようになります。SAPのエンド・ツー・エンドのアプリケーションスイートとサービスは、世界25業種における企業および公共事業のお客様が利用し、ビジネスにおいて利益を上げ、絶え間ない変化に適応し、市場における差別化を実現するサポートをしています。お客様、パートナー、社員、ソートリーダーなどのグローバルネットワークを通して、SAPは世界をより良くし人々の生活を向上させることに貢献しています。
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