2022.10.6:気候変動についての良いニュースと悪いニュース、そして掴むべきチャンス (オートデスク)


先月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書(AR6)の第 1 章を公表しました。数十万人にも及ぶ科学者らの意見を取り入れたこのレポートは、将来の気候変動に関する最も権威ある文書として広く認められています。今秋、オートデスクは第 26 回気候変動枠組条約締約国会議 (COP26)に参加します。これは、各国政府関係者や気候変動枠組条約締約国が一堂に会し、気候変動への取り組み方について合意を形成する機会となります。AR6 に掲載されたデータは、こうした協議の行方を大きく左右するものとなることでしょう。

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オートデスクでは、IPCC の知見に以前から注意を払っており、インパクトストラテジーにもそこから学び得たことを取り入れています。私たちが今年、最も重視しているのは、科学者たちの意見が以前に増して一致しているという点です。気候変動がもたらす破滅的な影響を減らすために、社会は今すぐ行動しなくてはなりません。

ひとつ不安なことに、報告書では、世界である程度の気候変動がおこるのは確実とされています。現在大気中に存在する温室効果ガスは、今後数年にわたって残存し続けます。仮に今日、世界中で一斉に温室効果ガスの排出をやめたとしても、海洋にためられた余剰エネルギーからの熱が、今後数十年にわたって地球の平均表面温度を上昇させ続けることでしょう。過去に排出され、そしてこれから排出されるであろう温室効果ガスによってもたらされる変化は、千年とまではいかずとも、数百年にわたって不可逆なものになるだろうと予想されます。このままの歩みを続けて行けば、その先にあるのは誰も想像したくない未来になるでしょう。

一方で、良いニュースもあります。気候変動による最悪の結果を回避する道筋が、まだ残されているのです。しかしそのためには、世界中の誰もがビジネス・産業・政府の垣根を越えて、今すぐ、積極的に行動する必要があります。

建造環境からの影響の軽減

建造環境からの温室効果ガスは、世界の排出量の 40% を占めています。この数字に含まれるのは、建物の運営管理に使われるエネルギーだけではありません。内包二酸化炭素と呼ばれる、建設時の排出や、建材や消耗品の製造・運搬時の排出が、この数字には含まれています。

建築・エンジニアリング・建設(AEC)業界のデジタル化は、この先の未来を変える大きな可能性を秘めています。3D ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)では、建築設計のエネルギーや炭素の効率、構造性能を向上させるインサイトによって、プロジェクトを細部にわたって詳細に設計することができます。

BIM はプロジェクトのパイプラインの隅々まで、チームの連携とワークフローの改善を行い、ミスや無駄を最小限に抑えます。また、設計や材料選択のすべてに一貫性のあるドキュメントを作成することで、ユーザーはモデルを物理的資産の完璧なデジタルレプリカであるデジタルツインへと進化させることができます。デジタルツインは運用効率を高め、廃棄物の削減やエネルギー使用量の改善に役立ちます。

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Embodied Carbon in Construction Calculator (EC3)のように、業界同士の協力による取り組みが進歩につながっているのは素晴らしいことです。EC3は、潜在的なサプライチェーン内の炭素負荷のデータに、デザイナーや建築業者、そして所有者がこれまで以上にアクセスできるようになる、無料のオープンソースツールです。 透明性を高めることで、プロジェクトチームはより環境への影響が低い材料を選択することができます。

人工知能や機械学習を活用したジェネレーティブ デザインは、製造業だけでなく、建築物の設計においても強力なツールです。デザイナーや技術者がプロジェクトにおけるパラメータを入力すれば、その目的にあったデザインを複数の選択肢から選ぶことができます。より環境に優しい建築物やインフラの構築、電気自動車や効率的な航空機の開発など、私たちはジェネレーティブ デザインがその期待に応えているのを目にしています。

気候変動の影響に強いインフラの構築

AR6 の第 1 章では、人間によって引き起こされた温暖化は、都市部に住む人に強く影響を与えると警告しています。さらなる都市化と頻繁な猛暑とが相まって、熱波はより深刻なものとなります。全都市部の 90% が海岸線やその近くにあるため、都市の多くは気候変動に伴って発生する海面上昇や高潮、異常降雨に対して特に脆弱です。

先日のニューヨーク市の洪水のことを考えても、この影響は明白です。ニューヨークの地下鉄は今年の夏すでに 2 度冠水しており、このようなことが各地で発生しています。気候変動による豪雨自体は問題の半分に過ぎません。インフラの老朽化が、この事態をさらに悪化させてしまうのです。

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水道をはじめ、より持続可能で強靭なインフラをつくるには、デジタル化がカギとなります。Innovyze  のデジタルツインテクノロジーは、水道インフラのモデル化、分析、エンジニアリングにおいて新たな可能性を切り開いています。このような包括的ネットワークモデルでは、リアルタイムでの監視や、高潮や断水の可能性がある際の警告によって、今後数時間~数日以内に起こるであろうトラブルをネットワーク管理者が予測する支援をしています。

未来のために今行動を

IPCC が予想している 1.5~2℃ の気温上昇を回避するチャンスはまだあります。しかしそのためには、皆が今すぐ、この 10 年のうちに温室効果ガスの排出を大幅に削減する必要があります。

私たちはいち早く科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を掲げた企業の 1 つです。温室効果ガス排出量実質ゼロを達成した今、私たちは IPCC が推奨するシナリオを実現すべく、さらに野心的な目標を掲げていきます。AR6 の新たな章が発表され次第、過去 10 年間やってきた通りこれからも私たちは IPCC の所見に従い、インパクトストラテジーも更新していきます。

しかしながら、大きな変化を成し遂げるためには、業界の連携とセクター間の協力が必要となります。そのため私たちは、お客様の持続可能性に向けた努力を支援するためのパートナーシップをインパクトストラテジーの中核としています。私たちは単に技術を提供するだけではなく、二酸化炭素排出量削減などの事業目標に沿ったイノベーション戦略の策定をお手伝いします。データや自動化、インサイトを活用することで、多くの企業が自社の事業目標に合ったサステナビリティ目標を見出しています。

IPCC レポートの第 1 章では、私たちがこれまでにお客様からいただいてきたような意見についてもその重要性が語られており、この課題はこれまで以上に重要で急を要するものとなっています。

執筆者:サステナブルビジネス部門 ディレクター/ベン・トンプソン

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本件の参照先:https://blogs.autodesk.com/autodesk-news-japan/climate-report/

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