イタリアのソリューションベンダーLARUS Business Automation S.r.l.(注1、以下 LARUS)と富士通株式会社(以下 富士通)は、富士通のグラフ構造データを分析するAI技術「Deep Tensor」を機能追加したAIスコアリングプラットフォームサービス「FUJITSU Finplex AIスコアリングプラットフォームサービス EnsemBiz(以下 Finplex EnsemBiz(フィンプレックス アンサンビズ))」を、LARUSのグラフXAI(注2)サービスに組み込むことに合意しました。LARUSは新サービス「Galileo XAI」として8月より金融業界に向けて提供開始し、富士通は日本市場に向けて本サービスの導入支援を行います。
LARUSのグラフデータベースプラットフォームに、富士通の「Finplex EnsemBiz」を組み合わせることで、従来できなかったグラフ構造データに対する精度の高い分析が可能になります。これにより、金融機関において、循環取引(注3)など高度かつ複雑な不正取引の自動検知が可能となり、金融機関のリスク低減およびコスト削減に貢献します。
両社は、今後も先端テクノロジーによるグラフ構造データの活用を促進し、高度な分析や新たな知見などから金融業界における業務の高度化を推進していきます。
LARUSは、グラフデータベースを提供するNeo4j, Inc.(注4)のイタリアにおける最大のパートナーで、15年以上にわたり世界中の企業の大規模かつデータドリブンなシステム構築に携わってきました。特に、AIによるグラフベースアプローチで、企業が持つデータからビジネス洞察を導き、多くの企業を支援してきました。
富士通の「Finplex EnsemBiz」は、主に金融機関向けにAIの予測根拠と次のアクションを示すことでローン審査の効率化や不正請求検知などを行うサービスです。このたび、人やモノのつながりを表すグラフ構造データから新たな知見を導き出す富士通独自に研究開発したAI技術「Deep Tensor」をオプション機能として追加し、LARUSに提供します。
グラフ構造データは、従来のリレーショナルデータと異なり、多様で構造が複雑なデータをネットワークの形で表現しています。「Deep Tensor」は自動でより効率的にグラフ構造データ間の関係性を分析、活用できるため、これまで難しかった循環取引をはじめとする不正取引の検知などが可能になります。
LARUSは、新サービス「Galileo XAI」を8月より提供開始し、日本市場においては富士通から「Galileo XAI」の導入支援を行います。
「Galileo XAI」は、グラフXAIのプラットフォームで、データ分析と可視化ツールを備えています。富士通の「Finplex EnsemBiz」によって説明可能な結果を、迅速にわかりやすく示すことができます。
LARUSと富士通は、これに先立ち、2020年1月からクレジットカードの不正利用や自動車保険の不正請求のPoCを行っており、検知率向上および誤検知率低下の検証結果を得ることができました。
- クレジットカードの不正利用についてのPoC(注5)
イタリアのクレジットカードの決済サービス会社Nexi Payments S.p.A.(注6、以下、Nexi)のデータを使い、循環取引を含めた不正検知について実証。従来の人手で定義したルールベースを使った手法より、不正検知率を72%から89%に向上させ、誤検知率を63%削減する結果を得られた。 - 自動車保険の不正請求についてのPoC(注7)
イタリアの自動車保険会社のデータを使い、保険の不正申請の検知について実証。人手で定義したルールベースを使った手法より、検知率を18%から81%に向上させ、誤検知率を82%から19%に削減する結果を得られた。
LARUSは、今後、「Galileo XAI」を金融業界だけでなく、政府、教育、製造、製薬などの各業界へも展開していきます。
富士通は、「Galileo XAI」を通して、日本の金融機関における不正取引の検知率向上に貢献していきます。また「Finplex EnsemBiz」の業務テンプレートを充実し、オルタナティブ・レンディング(注8)など適用領域の拡大を進め、グローバルに様々な分野において高度なデータ分析を実現していきます。
Nexi Payments S.p.A., Head of Data and Analytics, Stefano Gatti のコメント
金融業界は、競争力強化のため、決済のデジタル化を進め、AIなど先進テクノロジーの活用に積極的です。LARUSと富士通により提供される本サービスは、コネクテッドデータとグラフベースアプローチにより、不正行為に対抗し、コンプライアンスの強化という金融業界が抱える課題に対応しています。
LARUS Business Automation S.r.l., CEO, Lorenzo Speranzoni のコメント
富士通研究所との最初の共同研究から、「Finplex EnsemBiz」の一部を「Galileo XAI」に組み込み、提供開始できることを嬉しく思います。富士通は、革新性と卓越した技術で知られています。今後も、日本および世界のお客様とのパートナーシップを継続し、サービスを拡大していきます。
富士通株式会社 理事 八木 勝 のコメント
AIに対する不安を取り除き、トラスト(信頼)されるAIの実現を目指すため、説明可能なグラフAI技術「Deep Tensor」を「Finplex EnsemBiz」に機能追加しました。特に金融業界のお客様は、AIが導いた理由を理解し納得できることを望んでいます。今後、両社で他の分野においてもグラフデータの利活用に取り組んでいきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 LARUS Business Automation S.r.l.:
本社 イタリア ベニス、Founder・CEO Lorenzo Speranzoni。
注2 グラフXAI:
説明可能なAI(Graph Explainable AI)。機械学習の「ブラックボックス」と対照的に、グラフXAIは、AIの判断理由を説明することを可能にする。その結果、AIサービスの信頼性を高め、より導入しやすくなる。
注3 循環取引:
異なる複数の企業・当事者が相互発注を繰り返すことで架空の売上を計上する不正な取引の一種。個々の取引は正常に見えるため、不正検知が難しい。
注4 Neo4j, Inc.:
オープンソースの最も人気のあるグラフデータベースの開発会社。
注5 クレジットカードの不正利用についてのPoC:
詳細は2020年11月24日発行プレスリリース
注6 Nexi Payments S.p.A.:
イタリアにおける決済サービス(PayTech)会社。電子決済サービスにおいて、イタリアのデファクトスタンダードとなっている。イタリア証券取引所MTAに上場しており、約150の提携銀行とパートナーシップを築いている。
注7 自動車保険の不正請求についてのPoC
詳細は2021年3月8日発行プレスリリース
注8 オルタナティブ・レンディング
これまでの融資審査では利用されていなかったデータ(売買や決済など)を活用する融資方法。金融機関が提供してきた従来の融資を利用できない、もしくは利用できたとしても有利な条件を引き出せない人々に対して融資を実行することを目的としている。