3. 業界や戦略で異なる製品ライフサイクルにおける利益ポイント


 PLMは所詮,情報化投資の範疇である。SCM、ERP、そしてCRMとその点はなんら変わりない。企業のビジネス戦略の中で、利益ある競争優位を得るためにPLMを適用しなければならない。PLM投資も単に実装を目的とすることではなく、当該企業のビジネスにダイレクトに結びつけて考えなければ無駄金となりかない。それでは自社の製品(実際には商品)が如何なるものが知って置きたい。

Product Definition w500

図7:製品定義

 製品とはどのような特徴をもっているのだろう?PLM適用の先兵であった航空宇宙産業の場合、商用機ではモデル名(B747など)、そして機種(B747-400など)などをまず最上位に要件、機能(エンドアイテムとしてのデリバリー要件)、それら仕様を展開し、オプション、代替、生産方法、生産時期、生産地、そしてサービス(利用)、最終的にリサイクルまで要素を持つ。これは、自動車産業でも全く同様である。電子産業やハイテク産業でも同じである。姿がことなるソフトウェア産業に於いても同様であることは容易に想像出来るだろう。公共事業などではプロジェクト名が製品モデル名称、さらにレストランなどメニューにある料理名などが相当する。これは第一&二回で記述したデリバリー(物理)製品を創るための知的資産に形骸化し、製品定義に展開される(図7:製品定義)。

Product Essential w500

図8参照:製品とは?

 製品と言われるもの全てがこの要素を持っている(図8参照:製品とは? - 同じ要素を持つ)。製品によって、または企業によって表現は異なるものの諸々が当てはめることが可能である。

  さらに、セールス&マーケティング、開発・設計、購買、製造・生産、サービス&保守などの関係者が前回の『要件のトランスフォーメーション』と言うライフサイクルが関係し合う(図8参照:製品? - ライフサイクルが存在)。これもいずれの企業、業界でも明確な形で存在する。

  製品ライフサイクルの例として空港を見てみよう。末尾の写真1:米国コロラド州デンバーのステープルトン国際空港の壮大なライフサイクルの終焉の光景である。1995年に郊外の新たな広大なデンバー国際空港にその役目を譲り、その後数年を掛けて、設備の解体、そして土地そのものを元の環境状態に戻すものである。ここでの廃棄のフェーズは実はリサイクルである。これは製品定義にあるトップにあるデリバリー要件の一つでもあったのだ。

  さて、製品の特徴、ライフサイクルの存在が見えたところで、次は製品が商品としてビジネスの中で,ライフサイクルのどこで最も企業業績に貢献しているのだろうか?(図8参照:製品とは? - ライフサイクルの何処が飯の種?

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図9:業種別製品特徴比較 - PLMに関連して

  この課題の第一は大きくは業種で異なる。例えば、航空宇宙産業ではライフサイクル全体を考えると、巨大に見える製品開発への見返り、すなわち航空機の販売の収益よりも数十年に渡って使用される際の保守費用はかなりものである。最近、ある商用機エンジンメーカーはOEMに収める価格をゼロにすると発表した。機体価格を下げる狙いであると同時に、保守フェーズでのサービスビジネスが十分ペイしている例であり、利益フェーズはサービス(使用)にある訳だ。これは公益事業などの発電所や通信設備も同様である。しかし、E&E業界やハイテック業界に目を向ければ様相は逆転する。如何に市場にすばやく新しい製品を創出するかが鍵であり、開発&生産フェーズが勝負となる。また 多品種少量生産が多い 装置産業などは両方のバランスを採ったものになるだろう。(図9:業種別製品特徴比較 - PLMに関連して

  そして第二は企業のビジネス戦略に大きく左右されることである。例えば、最近のiPodに代表されるデジタル携帯オーディオを考えてみよう。まずハードウェアだけをとってみても、100%を外製で行くのか、またカスタムLSIにするのか、内製率をある程度確保しておくのかと大きく異なる。さらにミュージック&ムービー・ダウンロードなどのソフトウェアまで含めてビジネスモデルを考えると、ハード単体だけの売り切りビジネスにとどまらず,売った後の『利用』フェーズでの収益が巨大なものになることは明白な理である。このような例は別に目新しいものではなく、航空機の例でも示したようにサービスでも、また建機産業、コピー機産業でも類似している。当該企業が同業他社に如何に優位性を得るために絶対的な差別化を図った結果である。それは優位性を超えて競争上不可欠なものである。似たような製品でも収益のフェーズは様々なのである。

  PLMを考える場合にまずは自分たちの商売がどうなっているのだろうかについては考えることが先決である。往々にして、PLM、特にテクノロジーをどう適用しようかと言う手段を先に考えてしまうケースがあるが、それは危険である。まずは当該企業に於いて、『自分たちは何で飯を喰っている?』を関係者で共有しなければならない。それによってPLMの使いどころが変わってくる。適用の目的が全ての企業・組織で同じでないことを理解いただきたい。

 次回はPLMの定義、業界構造について明らかにしたい。

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写真1:米国コロラド州デンバーのステープルトン国際空港

(江澤 智、2013.5.10 改)


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