PDM誌上セミナー - 第二回:ニーズの明確化と投資効果と検証!


 日本国内でPDM(Product Data Management)への興味が一時のCALSブームと偶然オーバーラップした数年前、ベンダーを始め多くの方から『情報共有』や『データの一元管理』などと、PDMが過去のMISやCIMなどのキーワードの様に大きな期待感を寄せられたのは皆さんも御記憶だろう。今では、前回の『トレンドと現実』の様に新しいテクノロジーとして、PDMは価値をエンドユーザーに提供し、着実に根を着け始めている。しかし、テクノロジーへの興味だけではPDMは使いこなせない。PDMはユーザーのニーズに価値を与えるソリューションなのである。

 『PDMは何の役に立つのだろうか?』、この様な質問にすぐ答えられるだろうか?また、皆さんの職場で、『PDMを入れたが売上げが一向に上がってない』、などと経営陣から厳しい意見をいただいてないだろうか?また、筆者は様々な場面で、最近でこそ少なくはなってきたが、PDMを使いたいがための『PDMそのものの効果』についての具体的な指標の質問をお聞きする場面がある。ここで再認識いただきたいのは、『PDMは手段であり、目的でない』と、言うことである。ニーズあってのPDMソリューションであり、PDMツールなのである。PDMツールだけでは、何の解決も改良も出来ない。ニーズなきところに投資効果は議論出来ないのである。

重要なビジョン

 一般に昨今の製造業には次の様な課題があるだろう:

  • スピードへの対応:所謂アジル性とかアジル・マニファクチャリング
  • グローバリゼーション:所謂バーチャル・エンタープライズである、また製品の売り先である市場を意味する。
  • それに伴うITの進展と導入:所謂レガシーから脱皮、ISからITへの変化である。

 これだけでは漠然としているかも知れない。対岸の話とも感じられるかも知れない。しかし、日本の殆どの企業においてこれらの課題はあるものと筆者は考える。例えば、3次元データの導入を考えてみると、従来の様にフラットな部品表と単に『紙』の管理で、デザインレビューやリリースがスピードをもって正確に果たして可能だろうか?また、OEMと、逆にサプライヤと正確に製品データを授受出来るだろうか?既存のシステムは部分最適では機能してるが全体最適はどうだろうか?過去何十年と蓄積させているデータや情報にはムダはないだろうか?また、それによる弊害はでてないだろうか?

PDM Benefits

 この様な背景でPDMの利益・効果から見ると右の様な範疇に分類出来る。それらは『PDMツール』そのものを語るものでない。あく迄、企業の課題解決のビジョンに対するPDMが支援するだろう、効果・利益であり、企業が求める課題である具体的なニーズへの展開が可能となる。もし、具体的な課題、所謂『商売上のニーズ』無きところに、テクノロジーだけでPDMを適用を考えたり、進めておられる読者諸氏がおられたらその様なプロジェクトは即刻中止すべきである。いずれその投資は無駄になる。

『裏書き』が必要

 筆者は企業のPDM推進や担当者の皆さんとのお話の中で、投資への『裏書き』を奨めている。言い換えれば『裏書き』の無い、プロジェクトないし計画はおそらく成功しないだろうし、してないからである。では『裏書き』とは何か?

NTH VS MTH

 PDMは課題解決のためのソリューションである。『Nice to have = NTH』の様な『あれば便利ツール』ではない。『Must to have = MTH』のレベルの筈である。そのためには、当該ソリューションが会社のビジョンや短期・中長期計画にどうリンクするのか、効果をもたらすのかを最初に議論しておく必要がある。戦略的なポジションに敢えて置いて査定・評価、すなわちアプレイザル(Appraisal)しておくことを強く薦める。所謂、どこでも行っている生産設備と同じように投資効果を明確にして置くことである。これはPDMのテクノロジーの評価ではなく、ビジネス上の評価である。

 このPDMのニーズとビジネス上の効果・利益を査定・評価するPDMビジネスアプレイザル(註.1)は米国CIMdata社が開発したものであるが、その目的は皆さんの企業のコア・ビジネスは何か?、何を達成しようとしているのか?、将来へのビジョンは何か?、PDMの効果・利益について、どこに適用、その効果の算定。それは適切、妥当、有用、達成容易なのかなのである。また、最適なサプライヤ/ソリューションは?、どの機能が必要か、なければならないもの、不要なものは?その効果・利益はどうか?、結果的に導入の計画策定を行う訳である。

 これらを初期に行なうことで、担当者は勿論、経営陣やマネージメントが投資への確信が持てること、担当者&ユーザーがPDMに対する知識や実行のターゲットを明確に知り得ること、また、投資効果の明確化により、導入後の評価基準を明確に出来るので、プロジェクトの効果測定も主観的なものからより客観的なものにすることが出来る(図2に一例、参照)。

 以上、大変短いが今回はニーズと投資効果に記述したが、日本ではベンダー・セミナーが主流故、『陽の当たる』部分の導入例ないし『To-Be』の話しが多いのではないだろうか?何故そうしたのか、また、なぜ失敗したのか?これら『日陰』の真の話も重要である。弊社のPDMセミナーでも『As-Is』を主眼に報告出来る様努力している。そんな経験の中で一つ言えることは、PDM導入が成功してないと言われる話に共通したことは『ツールに責任を転化』していると筆者は見ている。すくなくとも上記の様にビジョン/ニーズ/投資効果について地道に明確にしておけば良い結果を得られる。次回は『PDMの導入とその現実』に触れたい。

参考1:PDMでの効果・利益(主なものの抜粋)

【参考文献:PDM Business Appraisal Guide, Second Edition, CIMdata社発行より

  • ビジネスの改善 新規ビジネスへの機会
    • 柔軟性のあるマネージメント
    • レギュレーション対応
    • 製品ライフサイクルやビジネスサイクルなど
  • 組織への貢献 コミュニケーションの改善
    • 組織変更支援
    • 紙の削減
    • デザインや部品の再利用促進
    • ツールのインテグレーション
    • データアクセスのセキュリティなど
  • ユーザー(個人)への貢献 矛盾の無いデータ・ソースの提供
    • 検索能力
    • 知識のアクセス
    • 人のリンク
    • アドミニの減少
    • エンパワーメント
    • 生産性の改善など
  • 製品やサービス 顧客の問い合わせを迅速に
    • 確実な製品構成
    • デザインや標準部品の再利用促進
    • 後工程のエラーや設計変更の減少
  • プロセスの改善 ペーパー・カオスからの脱皮
    • ドキュメント・コントロール
    • マークアップ
    • DRや承認のマネージメント
    • 設計変更のマネージメント
    • 購買とのリンク(戦略購買など)
    • 非常時の応答など

参考2:PDMシステムにより改善指標例

【参考文献:PDM Business Appraisal Guide, Second Edition, CIMdata社発行より

PDM機能 現状 改善期待値
チェックイン/チェックアウト管理 一般に1人ないし複数の人数がデータ管理者としてアサイン 人に関わる時間が60 - 90%のレンジで改善可能
データの検索チェックイン/チェックアウト操作を行う。
図面の出し入れや丁合。
設計変更に於けるレビュー&承認 変更資料のパッケージを作成&配布電子データと紙ベースのデータが混在 人に関わる時間が70 - 90%のレンジで改善可能
マニュアル・ベースのモニタリング
製品構成管理 CAD/CAMシステムのBOM機能を使用 人に関わる時間が40 - 90%のレンジで改善可能
一般に他の関連のアプリケーションとは非連動。相互関連を調べるための種々の作業が発生
標準部品や既存部品の利用 他の個別システムないしマニュアルによる作業 人に関わる時間が20 - 80%のレンジで改善可能
既にグループテクノロジー(GT)とかクラフィケーション・システムなどが使われている場合には20%のレンジ
資源、プロジェクト&ステータス管理 プロジェクト管理者は製品データとこの部分の関係をマニュアルでモニタリング 人に関わる時間が10 - 80%のレンジで改善可能


(江澤 智、2013.5.10 改)


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